2022年3月31日
多摩美術大学アートアーカイヴセンター所長 久保田晃弘
「多摩美術大学研究ポータル」は、多摩美の情報シンクタンクとして、知と創造のネットワークを形成するための「メディアネットワーク構想」実現のために企画、設計、実装されました。メディアネットワーク(MN)は、アートアーカイヴセンター、美術館、図書館、メディアセンター、芸術人類学研究所、そして大学院美術研究科などが連携することで、多摩美術大学における創作教育活動を、主に研究という側面から支援していくためのプラットフォームです。私たちは、このメディアネットワークを推進するためのミーティングを、2018年から定期的に開催してきました。
その最初の成果として、このたび、学内のさまざまな研究資料を包括的に管理し、それを多元的に活用するためのデータベースと、そのデータを検索、活用するための実験サイトである「研究ポータル」のベータ版を公開します。開発に際しては、作品群や各資料体の情報をニュートラルに取集し、その後それらの関係を動的、立体的に構築していけるようなものを目指しました。ベータ版では、美術館や大学院美術研究科、情報デザイン学科の協力によって集められた作品や論文データに加えて、データベースを検索、表示するためのクライアントサイドのライブラリも公開し、本サイトのために新たに開発したソフトウェアを、オープンなライセンスで広く活用できるよう配慮しました。
トップページの検索フォームの背後で動いているのは、今回公開したライブラリを用いて制作された、アーカイヴデータの動的なリンク表示です。アクセスするたびに、3つのランダムなデータが選択され、そこを起点として関連する項目が順次可視化されていきます。マウスポインターを重ねてクリックすることで、選択したノードの詳細情報が表示され、さらにもう一度ノードをクリックすることで、対応するデータベース画面が表示されます。多様なデータ群から、思わぬデータ間の関係を発見したり、ジャンルを超えたクラスターが見えてくるような、生成的かつ創造的なインターフェースのひとつの試みとして、ぜひ自由に使用してみてください。
今後は、ライブラリの簡易マニュアルや具体的な使用法についての諸情報を、順次公開していくと同時に、勉強会などのミーティングも企画しています。MN構想の一環として、美術館や大学院美術研究科を始め、MN関連組織のウェブサイトのリニューアルと相互連携も順次進めています。学内外から広く意見を伺いながら、横断的、学際的なMN構想をより充実したものとするために、データの追加とサイトのアップデートを継続的に行っていく予定です。今後とも、みなさまのご支援、ご協力のほど、なにとぞよろしくお願い致します。